2016年02月06日

強かな鴻海

経営再建を急ぐシャープが台湾・鴻海の買収を受け入れる形で協議が加速している。

鴻海は、日本の技術と雇用を守りたい産業革新機構の倍にも及ぶ金額を提示し、太陽電池事業以外の事業、雇用、およびブランドを一定程度守る姿勢を示している。しかしシャープ経営陣の思惑と早くもズレが生じ始めているようだ(日経電子版)

>シャープの買収について大阪市の同社本社で8時間にわたり協議した台湾の鴻海(ホンハイ)精密工業の郭台銘董事長は5日、太陽電池事業の業績がシャープ全体の足を引っ張っているとして、切り離す考えであることを明らかにした。ただ、「同事業以外は分解することはない。ブランドも継続させる」と述べた。買収後の雇用については「40歳以下の社員については切ることはない」と明言した
(中略)
>郭董事長はシャープとの交渉について「90%は乗り越えられている。残る10%は法的なところだ。ほとんど問題がない」と自信をみせた。シャープ本体へ出資する狙いを「自身の経験を生かし、シャープの新たな創業の意味合いで再生していきたい」と強調した
>今後、収益が厳しい液晶パネル事業で「早く(最新の)設備を入れ、技術への投資を行い、技術で『ナンバーワン』に戻したい」と話した。一方、家電については「鴻海はブランドを持たない。シャープの家電開発を強化すればシェアを上げるのは可能」と述べた
>シャープ社内でも、鴻海による買収が実現すれば「これまで財務基盤の不安定さから課題だった設備投資が進む」と期待する声があがっている
>シャープは当初、官民ファンドの産業革新機構からの出資を受け入れる方針だったが、支援額を上積みした鴻海案に傾いた。4日の取締役会で鴻海の買収案を協議。優先的に交渉していく方針を固めている
>ただ、両社の思惑は必ずしも一致しているわけではない。郭氏が5日、「今日は優先交渉権の合意書にサインした」と述べたのに対し、シャープは「合意書の中に優先交渉権を与えた事実はない」というコメントを発表。合意を急ぐ郭氏をけん制した。郭氏は台湾に戻る前に関西国際空港で、記者団に「一度や二度拒否されても気にしない」と述べるなど、強気の姿勢は崩さなかった


「液晶パネル」という優れたコア技術を持ちながら戦略を誤り転落し、瀕死の状態にあるシャープを、産業革新機構の倍額の資金で買収しようとする鴻海の真意は何か。たかだか白物家電のブランド代にしては高すぎる買い物だ。やはり狙いは液晶技術そのものだろう。

鴻海は台湾企業だが、主力工場は中国本土にあって100万人規模の雇用を誇っている。実質的に大陸企業といってもいいだろう。そして大陸でビジネスを成功させるには中共と良好な関係がなくてはならないはずだ。

とすれば、今回の買収劇も中共が裏で差配している可能性も高い。日本側の倍にも上る買収資金などは中共が支援しているのではないかとも疑える。

中共には、というより中国人には競争者を手段を択ばず弱体化させ、その力を奪取して追い落とし、自らが発展していくという行動態様がある。「液晶」という日本の優位技術を手に入れられれば自国の家電・スマホメーカーの部品調達は格段に優位となり、同時に日本の競争力を殺ぐことができる。まさに一石二鳥だ。

コア技術を手中にすれば、雇用やブランドなど見向きもしなくなるだろう。事業も解体切り売りされることになろう。中国人にとって「約束」「信義」など方便程度のものだ。

日経の記事では確認できなかったが、買収に当たり経営陣の入れ替えは行わないという条件も提示されたらしい。シャープの凋落を招いた経営陣が責任を問われることがないとすれば、彼らにとってそれだけで飛びつきたくもなるのだろう。

しかし冷徹な外資がいつまでもその約束を守るはずがない。技術をものにした暁に、ほとぼりが冷めれば彼らは紙屑のごとく捨てられるのがオチだ。「新たな創業」という言葉にはそうした思惑があるのではないか。そうなれば若年層の雇用云々もどうなるか知れたものではない。

それに気づかないのか、気づいていてもあえて気づかぬふりをしているのか。どちらにせよ、その程度の経営陣に率いられていたのだから、この会社の運命は必然だったと言うしかない。

産業革新機構と日本政府はただ手を拱いているだけか。
posted by 三四郎 at 13:22| 千葉 ☀| Comment(2) | TrackBack(0) | 政治・経済 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする