しかし今の豪州は親中政権。首相の親族関係者には中共要人の娘がいるという。まあ婚姻は個人的なものだが、俺としては「国家的ハニトラ」に引っかかったように見える。
そういう観点からすれば、もし日本がこのプロジェクトを手中にした場合、「虎の子」ともいえる潜水艦技術がそのまま中共に漏えいする危険もあったわけだ。モノは考えようで、負けてよかったと言えるかもしれない。
それはそれとして、冒頭にも書いた通り、日本は今回の潜水艦プロジェクトに、国際政治の力学をあてにして取り組んでいたらしい。具体的には米国の「後押し」である(読売電子版)。
前段略
>中国の海軍力に対抗するため、インドをはじめ、ベトナムやインドネシアなどが潜水艦を就役させ、もしくは保有を計画している。しかし、その大半は1980年代から運用が始まり、改良が続けられているロシアの「キロ級」と呼ばれる通常動力型潜水艦なのだ
>当たり前のことだが、潜水艦購入の際、ロシアはキロ級潜水艦の機密保持を購入国に徹底させている。このため米海軍が中国海軍の脅威を念頭に、南シナ海や太平洋で各国と連携しながら潜水艦を運用しようと思っても、キロ級潜水艦のグループと共同行動することは難しい。そのかわり、将来こうした国々が日豪で開発した潜水艦を運用することになれば、米海軍を中心とした潜水艦のネットワークが構築できる。こうした海洋の安定を目指した構想を、同盟関係を背景に、米海軍の意向を受けた米政府が豪政府に強く働きかけてくれるはずだという期待があったのだ
>だが、対中「弱腰」外交のオバマ大統領やライス米大統領補佐官(国家安全保障担当)らホワイトハウスの中枢が、日本の期待に応えることはなかった。中国が南シナ海で続ける人工島建設など海洋秩序の破壊活動に対し、米政府が「航行の自由作戦」を命じたのは、米海軍から作戦の早期実施を強く求められてから5か月後だった。中国の脅威に対し、軍事力を背景に抑止すべきとする米海軍と、対話による問題解決を期待するオバマ政権との間には、大きな溝があることは明らかだった
>防衛省には、仏DCNS社が推す「バラクーダ型」が最有力候補であるとの情報と前後して、こんな情報も伝えられていたという。それは、潜水艦の選定について、オバマ米大統領はターンブル豪首相に一切注文を付けず、自由に選んでくださいと伝えたようだ、というものだ
>南シナ海など中国の攻撃的な海洋進出をめぐって、日米豪は連携を強めているが、独仏をはじめ欧州各国の中国に対する感度は鈍い。経済的な期待から中国への武器輸出を望む声まで聞こえてくるほどだ。豪政府が日本と共同開発を決めれば中国の反発は必至なだけに、対話を重視するオバマ政権は傍観する道を選んだのだろう。この時点で、豪海軍の次期潜水艦をめぐる受注競争は終わったと言っていい
>確かに、豪州の失業率は約6%で、20歳代以下の若年層は10%を超すとされる。今夏に議会選挙を控えるターンブル首相にとって雇用対策は喫緊の課題であり、造船所のあるアデレードの雇用確保を約束した仏企業の作戦勝ちでもある。しかも、「日本が有利」という報道を受け、今年に入ってからは中国政府も日本の潜水艦を受注しないよう豪政府に対する圧力を強めていた。日本落選の要因はさまざまだが、最後になって、米政府から“はしごを外された”と思うのは、私だけではあるまい
ただでさえオバマの外交は「弱腰」と批判されてきた。しかも任期も残りわずかで完全にレイムダック化している。それを見ていれば、中国に対しては口先介入以上のことはできず、豪州潜水艦事案に「首を突っ込みたくない」という意思も、外交の専門家でなくとも見て取れることだ。
それを米海軍の思惑だけを見て事足れりとしていたとすれば、日本の官民は随分と呑気なものだというしかない。これでは仮に受注できたとしても、その先の「技術漏洩リスク」のことなど全く考えていなかったとしても不思議ではない。
こうした戦略レベルの杜撰さに加えて、戦術レベルでも「現地の雇用」を前面に掲げたフランスにしてやられている。
考えれば考えるほど日本の防衛技術輸出はお寒い、というか「人任せ」で「無防備」に見えてくる。もう少し「売り方」を勉強して出直すべきだろう。その意味でも決して負け惜しみではなく「売らないでよかった」と思う。