2015年11月29日

未必の故意

オウム真理教による東京都爆弾小包事件で、原料となる薬品の運搬を行い、殺人未遂幇助に問われて17年間の逃亡生活を送っていた菊池直子被告に「無罪」判決が下された。

「えぇ? いくら何でも「無罪」はないだろ」、と思っていたら、マスコミの扱い、受け止め方も一様ではないらしい(楽天NEWS/JCAST)

前段略
「薬品を運んだことも、十二分にテロ行為の一部」
>「オウム真理教ってのは、まさに国家転覆を狙っていたわけですから。そういうことも末端の人たちは全く知らなくて、ヨガ教室の延長だと思っていたんでしょうか
>放送中、宮根さんは、教団の危険性を当人は本当に認識していなかったのか、という疑問を繰り返した。オウム問題に詳しい紀藤正樹弁護士から電話出演で解説を受けても、なかなか腑に落ちない様子だ。「(一連のオウム事件では)亡くなられた方もたくさんいる。いまだに後遺症で苦しんでいる方がたくさんいる中で、この無罪判決というのは衝撃は大きいですよね」と、言葉を選びつつも判決に疑問を投げかける
>コメンテーターの手嶋隆一さん(外交ジャーナリスト)も、テロ抑止の観点から、「裁判所のそういう法技術的な問題だけですべてを判断してもいいのだろうか」という議論が起こるのではないか、との見方を示し、宮根さんに同調した
>同時間帯の「直撃LIVE グッディ!」(フジテレビ系)でも、無罪判決に対して、疑問のトーンが濃かった。司会の安藤優子さんは、17年間の逃亡という経緯から、「やっぱりなかなか一般普通の感情からいうと、そっちの方が『不合理』なんじゃないの?という気がしなくはないんですよね」と述べた。さらに、「薬品を運んだことも、十二分にテロ行為の一部なわけなんですからね」とも指摘した
>翌28日の朝刊でも、毎日新聞などで、一審に参加した裁判員からの不満の声が大きく扱われている。産経新聞は、一面で「裁判員裁判の根底揺るがす」との見出しを打った。
NHKでは、判決に肯定的なコメントを紹介
>一方、27日のNHK「ニュースウォッチ9」では、判決についてコメントしたジャーナリストの江川紹子さんが、肯定的な立場を採った。一審判決は裁判員にオウムの特殊な環境が十分に理解されないまま、「推測・推認・可能性」を積み上げる「有罪ありき」のものだったと指摘したのだ。そして、逆に今回の判決について、「極めて真っ当な判決だったと思う」と高く評価した
>同じ日の「報道ステーション」(テレビ朝日系)は、「オウム真理教家族の会」代表でVXガス襲撃事件の被害者でもある永岡弘行さんが、「(マインドコントロールを脱して)自分の頭で考えることができるような元の人間に戻ってほしい」と話した。また、スタジオでは古館伊知郎さんが、「菊地被告どうこうと言っても、オウムがなぜこんなことを起こしてきたかっていう本質ではないと思うんですね」と考えを述べた
>番組では、1995年の都庁小包爆弾事件で指を失った当時の都知事秘書・内海正彰さんの「誠に残念」という談話を紹介したものの、他番組とはまた違った観点となった
>呼称についても、各社の対応はバラバラだ。28日時点で、NHKや共同通信などは「菊地直子元信者(元オウム真理教信者)」、朝日新聞は「元信徒」という肩書を使う一方、読売新聞・毎日新聞などは「被告」表記を続けている


無罪判決懐疑派の俺としては、前段の宮根、手嶋、安藤各氏によるコメントに共感を覚える。何より率直な、根源的な疑問として、菊池被告が教団や自らの役割に対する犯罪性を認識していなかったのであれば、なぜ17年間も逃亡生活を続けていたのかが分からない。

冤罪に問われる可能性や批判中傷に対する恐怖があったとしても、現実に教団のなしたことで多くの重篤な被害者を出していることに対し、組織の構成員として説明する義務があるはずだ。しかも同被告は「走る爆弾娘」の異名をとり、教団の広告塔という重要な役目を果たしていた。

江川氏に反論するとすれば、仮に罪を今回の事件に限り、オウムという特殊な環境下で強いられた「単なる運び役」と矮小化したとしても、テロの片棒を担いだことには変わりなく結果として立派な犯罪ではないか。洗脳や無知では済まされない、「未必の故意」とでも言うべき心象があったと考えるのが自然な感覚で、それは十分罪に問えるはずだ。

古舘氏の「オウムの本質云々」というコメントは何か的ずらしのようで、菊池被告の行為を含め多面的重層的にオウム事件を捉えなければ、彼らが何をなぜしてきたかを突き詰めることはできない。菊池被告の罪がオウムの本質と無関係とでもいうようなコメントは、それこそテロの本質、淵源に対する考察を軽視するものだ。

疑問だらけのこの裁判、今後も徹底的な検証が望まれる。
posted by 三四郎 at 09:37| 千葉 ☀| Comment(4) | TrackBack(0) | 社会・教育 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
 私の大キライな古館や江川が支持するからではありませんが、罪の軽減は考慮されていいかもしれないが、無罪〜即時釈放は無いでしょう。

 この裁判長は、判例主義に則ったと言いたいのだろうが、オウム事件自体、特殊で、国家の存在に関わる重大な犯罪だと言う認識は何処にも感じられない。 否、寧ろ、治安維持法的な成分を忌避しているように感じ、その治安維持に対する司法の国家機関としての役割を考えれば、この判決は不当に軽い。

 下級審の裁判官が左翼的で、反国家的な判決をワザと出している様に感じる例は、幾らでもある。 例えば、福井の原発再開差し止め等は、嫌がらせとしか思えないレベルであった。

 この裁判長がどんな人物かは知らないのだが、17年間も逃げ回り、一生を棒に振った責任はいったい誰に帰すると言うのか、を考えれば、「捕まれば死刑になる」との恐怖の裏に、それを確定するダケの自らの認識があったからと考える方が妥当である。 そういう斟酌を意図的に排除しているようにしか見えないのでは、この裁判長こそ、身上調査の対象にすべきではないか?
Posted by ナポレオン・ソロ at 2015年11月29日 12:06
ソロさん、こんばんは。

いや本当に、「無罪〜即時釈放」はないですよね。あれだけ社会的な大事件を起こした組織の有力な一員です。しかも全国指名手配を受け17年間逃げていたのは何だったのでしょうね。

オウムの被害者だけでなく、一般人として納得できない、というか理解できません。
Posted by 三四郎 at 2015年11月29日 21:52
こんばんは。
ご無沙汰しております。

全く同感で、この判決には疑問を持たざるを得ません。
菊池被告が本当に事実を知らされず自分が無実であると思うのであれば、17年も逃げ隠れする必要はどこにもなかったはずで。
疚しい所があればこそ、コソコソとしてたという事です。

そもそも、知らなかったで何でも済むのなら、警察は要りません。
重大事件を起こしたテロリストがこんなに安易に無罪になるなんて、世界中のテロリストに日本はチョロい国だと自ら宣言してるに等しいと思います。
テロしても知らなかったで済むのですから。その前例を作ってしまった、ということでしょう。

そして、菊池被告はそっとしておいて欲しいだの、上告しないで欲しいだの、自分の罪の重さに対する反省や被害者側への配慮は微塵も感じられず、怒りしか湧いて来ません。

今回に限らず、日本の裁判の判決には被害者やその親族・遺族に対する人権は無視され、配慮の欠片も感じませんが、
一方、犯人に対するそれは異常に手厚かったりします。
全くおかしな話です。

犯人擁護する方が儲かる、大きな事件の弁護団に加われば
名を売ることが出来るということらしいですが…本当に腐っています。


Posted by amenbo at 2015年12月03日 21:33
amenboさん、おはようございます。

>そして、菊池被告はそっとしておいて欲しいだの、上告しないで欲しいだの、自分の罪の重さに対する反省や被害者側への配慮は微塵も感じられず、怒りしか湧いて来ません

まったく身勝手、自己中心的ですよね。オウムの名のもとに生命や家族を失った人々への贖罪の気持ちなど全く感じられず、却って自らを被害者に仕立てているような気さえします。

菊池被告には一生かけて償わねばならないものがあることを自覚すべきです。
Posted by 三四郎 at 2015年12月06日 09:59
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