2016年05月07日

トランプ旋風

米大統領選でトランプ氏の共和党指名が俄然現実味を帯びてきた。歴代の共和党における正副大統領経験者や元政府高官らが党大会欠席による批判と抗議の意思を示しているが、トランプ氏の側に法的倫理的もしくは手続き上の瑕疵が無ければ順当に指名されるだろうし、そうでなければ米国ではない。

結局、米国が自由と民主主義の国であることを標榜する以上、民意として示されれば彼が大統領になるだろうし、世界はこれを受け入れるしかないのだ。

ここにきてようやく日本の政界でもトランプ氏を意識し牽制する言動が見られ始めた(読売電子版)

石破地方創生相は6日夕(日本時間7日朝)、米大統領選で共和党指名候補になることが確定したドナルド・トランプ氏(69)が在日米軍駐留経費の日本側負担増を求めていることに対し、「日米安保条約をもう一度、よくお読みいただきたい」と批判した
>ワシントン市内で記者団に語った
>石破氏はこの中で、米軍は安保条約上、日本防衛に加え、極東の平和と安全のために日本に駐留していると指摘。「米国がひたすら日本の防衛のために負担をしているのだ、よってその経費は日本が持つべきだということは、日米安保条約の内容からは論理上、出てこない」と述べた
>石破氏は同日午前(日本時間6日深夜)に行った講演では、「同盟の本質と国際環境を正確に理解すれば、必ず正しい政策が立案されると信じている」と米国の聴衆に訴えた。また、憲法9条が改正される可能性を念頭に、「日米安保条約や日米地位協定を改定することは将来的に真剣に検討されるべき課題だ」とも語った


石破氏に期待する方が無理なのだろうが、どうも非常に矮小な視点で捉えているように思う。

トランプ氏の言わんとするところは日米安保条約の解釈論ではないと俺は思う。日米の、否、21世紀の世界における米国の安保政策スタンスそのものに疑問符、というか「ノー」を突き付けているのではないのか。そのことは、中国や北朝鮮の問題は東アジアで何とかしたらいい、という突き放したような態度に端的に表れている。

確かにトランプ氏は政治家として素人だし、有能なブレーンもいなさそうではある。それゆえにこそ、米国一般大衆の感情に響きやすいコメントをポンポン言えるわけだ。

戦後70年以上にわたり「世界の警察官」であり続けた米国民は、その過程で父や伴侶や恋人を戦場で失い、或は自ら一生消えぬ傷を負って後半生を生きてきた人々も多い。気が付けば国際社会ではヒーローどころか悪役、憎まれ役になる場面ばかりだ。

加えて「移民と自由の国」という建前のもと、難民もテロリストも押し寄せ、職の奪い合いや治安の悪化を招いている。「いいことなど何もないじゃないか」という米国民の精神的疲労感、虚無感をトランプ氏は代弁してきたことは間違いない。

一言でいえば中下流米国民の本音を背負っているわけで、それを「民度が落ちた」とか「知的レベルが低い」とか言ったところで「負け犬の遠吠え」にしかなるまい。米国民がそれを求めるなら詮ないことだ。

そういう認識があれば、日本人政治家の講演を聞きに来るような層の聴衆に向かって「日米安保条約を読み直して」とか「同盟の本質と国際環境を正確に理解すべき」といったところでトランプ氏には届かないし、届いたところで「そういう問題じゃない」と一蹴されるのがオチだろう。

では日本はどうすべきか。

せっかくトランプ氏が日本の核武装容認を匂わせた機会に、核武装も含めた総合的な安保政策見直しを行い、日本の安保体制の再構築をすべきであり、少なくともこれを公言しなくてはならない。

戦後レジームをスクラップアンドビルドするためには、こういう「風」と「力」を巧みに利用していく強かな視点をこそ日本の政治家には期待したいのだが。
posted by 三四郎 at 12:54| 千葉 ☁| Comment(6) | TrackBack(0) | 政治・経済 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
米国の実情を知らぬまま発言させて貰えば、トランプの出現は「古き良きアメリカ」を支えた中産階級が少なくなったことでしょう。ちゃんとしたアメリカ人が少なくなったから。

外国人である私から見てもトランプの言い分は首肯できます。アメリカばかりが損をするのは許せないと。

トランプとヒラリーとどちらが大統領に望ましいかと問われれば、私はトランプさんになってほしいです。
Posted by 相模 at 2016年05月08日 09:04
相模さん、こんにちは。

そうですね。私も同じ認識です。この先、トランプ氏の言動がどうなるか、注目ではあります。
Posted by 三四郎 at 2016年05月08日 17:30
トランプ氏は色んな差別発言や、トンデモ発言でマスコミを騒がせていますが、裏事情を知らないとか、他国の歴史に興味が無い。知識が無いレベルなら、極めて普通の米国人感覚で正直に自分の気持ちを出しているダケに見えますね。

 問題は、共和党の保守本流と言う、プロテスタントにして有産階級(金持ち)に拠って構成される層の、いたく気に障る御仁の様で、彼らのトランプ潰しが不成功に終わったのを受けて、この先、心配しているのですが、要は、民主党であろうが共和党であろうが、金持ち層の、懐中心の政府の施策を推進するに、政治家が用いる、嘘や、小難しい論理には、最早米国民は、見向きもしなくなったと言う事でしょう。

 特に、産業を空洞化させた結果、米国社会は、遂この間まで、失業率10%内外の高失業率社会だった。GDPが、日本の6倍=3千兆円位あるのにです。特に、共産シナに大挙して押しかけ、今や、米国内の商品の90%の消費財は、シナ製との事。 是では、国内でのモノ作りは出来ず、仕事はサービス業だけになって終うでしょう。

 製造業なら、収入も雇用も安定しているし、誇りも持てますが、サービス業は、白人で無くとも良いワケで、特殊なスキルも必要ではない。 すると収入は低いし、雇用も安定して居ません。

 こんな状況では、嘗て米国の中核を成した中産層が、大きくその数を減らし、零落して居ます。

 トランプ支持は、そう言う層の当然の疑問や本音を代弁してくれるから起こって居る現象でしょう。

 この先共和党が、どの様な舵を切るのか見物です。

 私としては、K氏が復活する事が、日本にとって、一番悪い展開だと思って居ます。 ヒラリー大統領が当選すると、その可能性が高まるワケで、出来るなら、トランプ大統領、ケーシック副大統領の線で、と思って居ます。
Posted by ナポレオン・ソロ at 2016年05月08日 18:12
ソロさん、こんばんは。

トランプ氏の言動は身も蓋もないものが多いのですが、要はそれって一般大衆の本音ということですよね。それを見てみぬふりをする偽善にこそ、米国民はウンザリしているのではないかなと思います。

日本にとって「トランプ大統領」は様々な「タブー」から解放されるきっかけになるかもしれません。「エース」か「ジョーカー」か気になるところではありますが。
Posted by 三四郎 at 2016年05月08日 22:02
もともとアメリカは孤立主義だったので、それに帰っているのでしょうね。民族の分断もどんどん進んでいるように思います。
うちも工場の人は圧倒的にトランプ、事務職で真面目なクリスチャンはクルーズと完全に分かれていました。クルーズはもっと危険だと思いますね。

確かに戦後70年、莫大な金と犠牲を払いやってきた結果がいまの混沌ですから、もう中東もアジアも勝手にやってくれっていう気持ちも分かります。
昔、中間層が信じられないくらい豊かだったので息子、孫の時代の反動も大きいですね。メキシコ人を追い出したり、外国品に高い関税をかけたところで、所得が増えるわけではないのですが、そういう理屈は通用しません。金持ちも多すぎて、格差もとんでもないですしね。

日本にとっていいように考えると、左の人たちの平和ボケを一掃出来るいいきっかけにはなるのでしょうか。ヒラリーになったら、アメリカも日本も今の状態が続くだけですかね。トランプになったら、内戦が起こるかも、。
Posted by オハイオより at 2016年05月10日 03:32
オハイオよりさん、おはようございます。

やはりトランプ支持は草の根レベルで進んでいるのですね。外から見ても、そうでなければここまでならないだろうなと思います。

日本にとって吉と出るか凶とでるかわかりませんが、これを日本が変わるチャンスにするくらいの強かさが日本人には必要ですね。日本を含む世界が試されることになるのかもしれません。
Posted by 三四郎 at 2016年05月15日 08:32
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